映像制作を手掛ける株式会社ディー・エル・イー(東京都千代田区)は12日、人気アニメ「クレヨンしんちゃん」の新たなスピンオフ作品として、しんちゃんの父親・野原ひろしを主人公にしたアニメ「野原ひろし 昼メシの流儀」の制作を発表しました。同社はアニメ「秘密結社 鷹の爪」シリーズでも知られ、個々のクリエーターが作画、着色、動画制作を一手に引き受けることで、制作期間を短縮し、コストを削減する手法を取り入れています。
「野原ひろし 昼メシの流儀」は、漫画家・塚原洋一さんによって2016年に連載が開始され、電子版を含む累計発行部数は80万部を超えるヒット作となっています。この作品では、限られたお小遣いと短い昼休みの中で、ひろしがこだわった昼食を紹介する様子が描かれています。さらに、クレヨンしんちゃん本編とは異なり、中間管理職としてのひろしが後輩や上司との関係に悩む姿も描かれ、読者の共感を呼んでいます。塚原さんの絵柄は、クレヨンしんちゃんの作者・臼井儀人さんのスタイルに似ているものの、微妙な違いがファンに愛されています。
現在のアニメ市場では、「鬼滅の刃」に代表されるような制作に5年以上を要する高品質な作品が注目を集めていますが、一方で制作費の高騰は制作会社の経営に影響を及ぼしています。テレビアニメ向けには、短納期で低コストな作品の需要も存在する中、ディー・エル・イーは個人クリエーターの経験を生かし、コストと品質のバランスを重視したアニメ制作を目指しています。
この新番組は今年の10月に、毎週金曜日の午後11時からBS朝日で放送が開始される予定です。ひろし役はおなじみの声優・森川智之さんが務めます。塚原さんは「アニメ化のお話をいただいた時は、まるで天にものぼる心地でした」と語り、さらに「森川智之さんの声が入った時、天を超えて銀河をも超える心地でした」とコメントしています。(高木克聡)