
『シノビ』より / (C)KAZUYA KURAMOTO 2024
近年、コミックの映像化やドラマのコミカライズが盛んに行われている中、エンターテインメントに熱い視線を送るファンに向けて新たなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、手塚治虫文化賞の最終選考候補にも選ばれた注目の作品『Battle Scar』の一編『シノビ』についてご紹介します。この作品は、作者の蔵本千夜さんが実在するウクライナ軍人ボフダン・シノビ氏にインスパイアされて制作したものです。2023年1月9日にX(旧Twitter)に投稿されるや否や、4.1万件以上の「いいね」と多くのコメントが寄せられました。本記事では、蔵本さんへのインタビューを通じて、作品の背景や創作への思いを探ります。
■ウクライナの軍人と憧れのヒーローたちの出会い
『シノビ』より / (C)KAZUYA KURAMOTO 2024
ウクライナの軍人シノビは、日本の忍者漫画に強い憧れを抱いています。「一人の小さな力でも変化を生むことができる」と信じる彼は、2022年のロシアとの戦争においてハルキウ戦線に参加していました。シノビは、アニメや漫画のバッジを身に着けて任務に臨みます。
物資輸送の任務中、彼は難民避難所として利用されている郵便局を訪れます。そこには高齢者や子どもたちが多く、戦争の影響で怯えている様子が見受けられました。その中で、お菓子を配るシノビは、同じ作品を愛する子どもと出会います。「君も強くなってね」と励まし、アニメのバッジを手渡し、彼に勇気を与えます。
子どもが「お兄さん、ありがとう!また会おうね」と笑顔で手を振る姿を見届けたシノビは、次回の再会を楽しみにしながら帰路に着きますが、背後から響く砲撃音に心が痛むのでした。
この作品に触れた読者からは、「この物語はウクライナ人の現実そのもの」「心が痛むが実話だと知ると辛い」「あまりにも悲しい」といった感想が寄せられています。
■日常の温かさと戦争の残酷さを描く
『シノビ』より / (C)KAZUYA KURAMOTO 2024
本作はウクライナ戦争の現実を深く考察させる作品です。ウクライナ戦争をテーマにした理由を蔵本さんは次のように語ります。「私はロシアとウクライナの両方に友人がいて、彼らの安否を心配する日々が続きました。しかし、心配するだけでは何も変わらない。そこで、自分にできることは漫画を通じて彼らの物語を伝えることだと考えました。」
作品には、戦争の最中でも大切な思い出を子どもに分け与えるシーンが印象的です。蔵本さんは「この作品はただ戦争の悲惨さを描くものではなく、主人公たちの日常生活や文化の美しさにも焦点を当てています。彼らは単なる戦争の被害者ではなく、強く生きる人間として描きたい」と強調します。
また、リアリティを追求するために、軍人の動きや制服、武器に関する詳細な調査を行い、専門家の協力を得て描写の正確さを追求したと語ります。
特に心に残る場面について、蔵本さんは「シノビが涙を流しながら銃の血を拭うシーンが印象的です。そのセリフは、私が伝えたかった思いを象徴しています」と述べています。
今後の展望として、蔵本さんは「引き続き、ウクライナ戦争に巻き込まれた人々の物語を描き続けたい」と語ります。ニュースでは伝えられない彼らの実際の経験を記録することが目標です。
次回作ではフィクションの要素も取り入れ、軍事産業を背景にした新たなストーリーに挑戦する予定です。「私の作品を通じて、戦争に巻き込まれた人々の想いを広めたい」と語る蔵本さんに、今後の活動から目が離せません。